「米の多様利用」   

今までのことは、すでに何回も何百回も議論されたことであり、その経験をふまえて今回の現象を考えなければならない。

今回、政府も政治家も、米粉を利用することが国民の食糧の安定生産につながるという認識を持ったことに意味がある。
自給率とは、国民の必要とするカロリーをどのようにして生産するかである。
国内で生産できなければ、輸入しなければならない。それは、国民の生命を守らなければならない政府の責任である。

今までは、国内で生産できるものでも外国からの輸入品の方が安いからと輸入し続け、結果として国内の生産基盤を弱体化させた。そして、世界一の食糧輸入大国になった時に突然、世界中で食糧不足が起きた。
このような事態に対応するために、国は日本人の主食である米を多様に利用することにより、1%でも自給率を上げ、これからの農業政策の柱にしようと考え始めたようだが、それはそれでとても良いことではないかと考える。
これからは、農業関係者をはじめ民間企業は、国の政策の方向性を見ながら、全力を挙げて国の方向性の先取りを始めることだろう。

協会では、21年前の創立以来、米の付加価値を求めて様々な努力をしてきた。
平成15年に発芽玄米の取り組みを始めとし、平成17年の米の栄養機能食品の開発への取り組み、そして今年平成20年は、本格的な米粉への取り組み開始にあたり、7月中旬には第一期工事として、月産200トンの米粉工場が完成する。

米粉には、生米を利用する米粉、水引きした米粉、アルファー化した米粉、膨張した米粉、白米粉、玄米粉、発芽玄米粉等、多種の米粉があり、それぞれの商品化も進んでいる。
協会では発芽玄米設備の利用により、それらの全てに対応できるようになっている。
現在、協会では設備増加の準備と、また米粉の品質確認と商品サンプル、レシピ作りを進め、併せて営業も開始している。

小麦粉業界では、小麦粉の値上がりは商品に付加しながら対応できるが、小麦粉の輸入が激減したら原料が入手できなくなるため、そうなったら大変だという声も出てきた。
それは、米の世界でも同じである。米の価格が上がった場合には他店でも値上がりするので自店でも値上げしやすいが、米不足の場合には流通に片寄りが出るため、力の弱い所には現物が回ってこないことが多く、その時には仕事ができなくなる。業界では、安いものを探す時代から、安全で安心でき、その上、安定供給できる取引きを求めるようになってきた。

そして、安定供給できることが最も大事なのではないかという、食糧にとっては当たり前の条件に、誰もが気づくことをと期待している。なぜなら、安全・安心な食糧を安定して生産できるのは国内生産しかないからである。そのために、国民一人ひとりの負担がどうなるのかということも、大事なことである。

by a-wakui | 2008-07-06 08:15

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